宮崎駿監督が率いるスタジオジブリは続編を作らないことで有名ですが、それはなぜでしょうか?
「耳をすませば」は実写映画の続編がありますが、ストーリーや設定も変わっていて、制作もジブリではありませんでした。
唯一の例外がジブリ美術館で観ることのできる「めいとこねこバス」がありますが、これも本編の補足的な位置付けで10分間と短編であり、続編と呼ぶには少し厳しいと思います。
宮崎駿監督がナウシカの続編は創らないと公言したのは有名な話です。
なぜスタジオジブリは続編を作らないのでしょうか?
トトロの続編と位置付ける人もいるジブリ美術館でしか観れない「めいとねこバス」は例外にあたるのでしょうか?
調べて考察し、記事にまとめました。
ジブリが続編を作らないのはなぜ?
スタジオジブリが映画作品の続編を作らない理由には、いくつかの深い芸術的、哲学的な理由が存在します。
まず、宮崎駿監督自身の創作スタイルやスタジオジブリの制作方針が影響していると言えます。
そして、物語やキャラクターに対するアプローチ、そして続編がもたらす商業的リスクなども、この決断に関係していると考えられます。
以下、いくつかの観点からジブリが続編を作らない理由を探ります。
宮崎駿の創作哲学
スタジオジブリを率いる宮崎駿監督には、アニメーション創作への深い信念や哲学があり、自身の考えに基づいて一貫した作品制作スタンスを貫いてきています。
商業的成功を第一に掲げるディズニーアニメとは対局にあります。
完成度の高い芸術的作品しかつくらない
宮崎駿監督は、映画製作において「一度完成した物語は、それ以上語ることはない」という考えを持っています。
彼の作品は、あくまで1つの物語を完結させるために創作されており、各作品はその物語の中で完全な形を持っています。
作品が完成した時点で、物語は観客に対して解放され、その後の物語の展開は観客一人一人の想像に委ねられます。
このアプローチは、観客に深い余韻を残し、それぞれが物語に対して独自の解釈や感情を抱けるように設計されています。
続編を作ることでその余韻や想像の幅を狭めてしまう可能性があり、それは宮崎監督の望むところではないのです。
常に新しいものに挑戦し続ける
また、宮崎監督は新しいアイデアやテーマに挑戦することに価値を見出しています。
彼は同じキャラクターや世界観に戻るよりも、新たな挑戦を好む傾向が強く、これが続編を作らないもう一つの理由となっています。
例えば、「となりのトトロ」のような作品は非常に人気があり、多くのファンが続編を望んでいるにもかかわらず、宮崎監督はトトロの世界を一度完成させた後、別の新しい物語に取り組んでいます。
物語の完成性とテーマの一貫性
スタジオジブリ作品の多くは、際立って独立した物語構造を持っています。
各映画がそのテーマやメッセージを完全に伝えるために設計されており、1つの作品内でテーマを掘り下げ、物語が完結するようになっています。
続編を作ることで、その物語のバランスやテーマが損なわれるリスクがあります。
例えば、「千と千尋の神隠し」は、千尋が異世界で成長し、自分自身のアイデンティティを見つける過程を描いた作品です。
この映画は、彼女の成長と物語の結末が1つのまとまった体験として描かれています。
もし続編が作られた場合、彼女の物語にさらに何かを付け加えることは、初作で達成された感動やテーマを薄める可能性があるのです。
スタジオジブリは、物語のテーマ性と一貫性を非常に重視しており、続編を作ることでこれらが損なわれるリスクを避けているのです。
続編の商業的リスクと作品の独立性
スタジオジブリは、商業的な成功に依存しないスタンスを保ちながらも、高いクオリティの作品を作り続けてきました。
続編は商業的には利益を生む可能性が高いものの、同時に大きなリスクも伴います。
続編が初作の成功を超えることは難しく、ファンの期待に応えられなければ、作品全体の評価が下がる恐れがあります。
スタジオジブリが誇る作品の多くは、非常に高い評価を受けており、その評価を続編によって危険にさらすことは、スタジオとしてのリスクが大きいのです。
また、スタジオジブリの作品は、商業的な成功以上に、芸術的な価値を重視しています。
商業的理由で続編を制作することが、スタジオジブリの本来のクリエイティビティや作品の独自性を損なう恐れがあると考えているため、続編の制作に消極的なのです。
ファンの期待とキャラクターへの愛着
スタジオジブリは、キャラクターや物語に対するファンの愛着を大切にしており、続編を制作することでそのイメージを壊すことを避けています。
例えば、「魔女の宅急便」のキキや「ハウルの動く城」のソフィーといったキャラクターは、観客にとって非常に愛される存在です。
しかし、続編を作ることでキャラクターの成長や性格が変わってしまい、観客の持つイメージが損なわれる可能性があります。
また、続編が制作されることで、キャラクターの魅力や物語が持つ独自の世界観が薄れてしまうことも懸念されています。
スタジオジブリは、1つの作品が独立した芸術作品として存在し、観客がそれをどう受け止め、感じ取るかを尊重しています。
続編が作られることで、観客のイメージが固定化されることを避けたいという考えもあるでしょう。
ジブリの独自性を守るための選択
スタジオジブリが続編を作らない最も大きな理由は、彼らが守りたいと考える「独自性」にあります。
スタジオジブリは、ディズニーやピクサーのような他のアニメーションスタジオとは一線を画す、独自の芸術的ビジョンを持っています。
そのビジョンには、商業的な流れに乗るのではなく、1作1作が独立した作品として高い芸術的価値を持ち、観客に強い印象を与えるという理念があります。
続編を制作することは、こうしたスタジオジブリの独自性やアイデンティティを揺るがすリスクがあるため、あえてその道を選ばないのです。
ジブリ美術館で見れるトトロの続編は例外か?
例外としての「となりのトトロ」の短編映画
唯一の例外として挙げられるのが、ジブリ美術館で上映されている「となりのトトロ」の短編映画「めいとこねこバス」です。
しかし、この作品は本編の続編というよりは、補足的な解説やエピソードのような位置づけであり、どちらかというとスピンオフという立ち位置です。
このように、ジブリはキャラクターや物語の世界観を完全に放棄するわけではなく、時折ファンに対して小さな贈り物として補完的な作品を提供することはあります。
しかし、これらはあくまで短編や外伝の形をとっており、本編の続編を作るという考えとは異なります。
ジブリが続編を作らないのはなぜ?ジブリ美術館で見れるトトロの続編は例外か?まとめ
スタジオジブリが続編を作らないのはなぜ?の答えは、宮崎駿監督の創作哲学、物語の完成性、商業的リスク、キャラクターへの配慮、そしてスタジオとしての独自性を貫くため、でした。
スタジオジブリは観客に対して一つの作品を提供し、それ以上の説明や補足をしないことで、観客自身が物語を自由に解釈し、感じ取ることを重視しています。
この独自のスタンスが、スタジオジブリ作品の魅力であり、世界中のファンに愛される理由の一つでもあるのです。
続編を徒に作らないのは彼らのポリシーなのです。
ジブリ美術館で見ることのできる「めいとこねこバス」はトトロの続編というより後日談として物語の幅を広げるファンサービスの短編です。
例外としてのトトロの続編というには短すぎるし何より新しい物語=作品になっていません。
気になる中身ではありますので美術館を訪れた際には逃さず鑑賞したいですね。
コメント